2011/12/28

JBL 2360A (8)

2360Aのことをより深く理解するためには、比べられる相手、ライバルが必要。
黄色いホーンの場合、それはALTEC MR94と94A。

MR94との出会いはヨハネスさんのA5システムでした。
そのMR94の音は…本当に素晴らしかった。
生粋のJBLファンとして叩きのめされた。

シネマシステムの歴史から推察すると、MR94は2360Aに届かなかったホーンではなかったのかと思っていました。
しかし、ネットワークの、それも定指向性ホーン用の補正回路を備えていないそれにつながれてのあの音は、想像をはるかにはるかに超えるものだったのです。

ALTEC vs JBL。
誰が何と言おうとこの構図に当てはまるのはMR94と2360Aだけ。
あの日以来。




しかし、日が経つにつれていろいろな疑問が湧いてくる。
MR94の実力がほんとうにあの音の原因だったのか。
ドライバーのちがいなのではなかったのか。

それを確かめる機会はやがてやってきた。
なんとなく入手したMR94A。
これはFRPホーン。
MR94や2360Aよりもはるかに剛性がある新型。
MR94はそれ以前のマルチセルラホーンと同じ造り。







ただしドライバーは黄色いホーンと組合わせている2446Hのスナウトレス版として2451Hをあてがった。
スロート部分には0.05インチの段差があるが、これはそのまま接続した。
しかもMR94Aは縦置き。
不利な条件下でMR94Aを負かしてやろうと思ったからだ。









そしてその音に驚嘆させられた。
またしても打ち負かされたのはこちらのほう。
ホーンの材質も、スロート部分の段差も、そしてドライバーの相違も超えて、MR94Aは「あの音」で鳴り響いた。
ほとんど未調整の状態なのにどうしてこんな音が出せるのであろうか。
その後もその状態で聴き続け、比べ続けたが、結論は変わらない。
現在でもMR94と94Aは2360Aの手強いライバルである。



聴感上の周波数レスポンスはMR94 94Aの方が2360Aよりも整っている。
おそらく大型マルチセルラと代替可能にするために、ネットワークにそのまま接続しても使えることを考えて開発したのかもしれない。
さらに、4インチダイアフラムではなく3インチダイアフラムで300Hzから使用可能とするために、ホーンのプロポーションをあれこれ試したのかもしれない。
2360Aのスロート口からスリット部分までの長さに対してMR94Bはその長さが短く、その代わりにMR94Bのベル部の方が長い。
全体のプロポーションはMR94Bの方がエクスポネンシャルホーンに近いことが理解できるだろうか。
より自然なプロポーションが一役かっているのは間違いない。














2011/12/20

Subscription Concert No.727 at Suntory Hall

東京都交響楽団の第727回定期演奏会に行ってきました。








指揮はエリアフ・インバルさん。
ヴァイオリンはジュリアン・ラクリンさん。
曲目はショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番と交響曲第12番「1917年」。

ラクリンさんのヴァイオリン協奏曲、曲の始めからいきなり引き込まれました。
1704年製ストラディヴァリ「ex Liebig/エクス・リービッグ」の使い手。
深く深く曲のなかに入っていけたような気がします。

インバルさんの交響曲第12番。
これも実に素晴らしかった。
インバルさんのファンになってしまい来年度も都響の年間会員になりました。
同じ席。






交響曲第12番ではライブ録音が行われていました。
サントリーホールでマルチマイク録音を見たのは初めてです。
インバルさんと客席の間の上空にステレオの一対、インバルさん前方上空に一対、さらにその外側、第1第2ヴァイオリン、ビオラ、チェロの各セクションの上空に1本ずつ。
さらに金管、木管、打楽器群のそれぞれの各パートごとに1本又は2本。
小型のステレオマイクと大型のコンデンサーマイクなどが身の丈ほどの位置に配置されていました。
ステージ上空の反射板はやや下方に配置されており、中低域に厚みを感じました。




交響曲第12番はライブ録音が行われていました。
サントリーホールでマルチマイク録音を見たのは初めてです。
インバルさんと客席の間の上空にステレオの一対、インバルさん前方上空に一対、さらにその外側、第1第2ヴァイオリン、ビオラ、チェロの各セクションの上空に1本ずつ。
さらに金管、木管、打楽器群の各パートごとに1本又は2本。
小型のステレオマイクと大型のコンデンサーマイクなどが身の丈ほどの位置に配置されていました。
ステージ上空の反射板はやや下方に配置されており、中低域に厚みを感じました。

マルチマイク録音は各楽器の音を明瞭にピックアップすることができます。
人間の認知機能と似ている。
街の喧騒の中でも話し相手の言葉はよく聞き取れるというのと同じです。

よく聞こえる、という以外に定位の問題もある。
オーディオに置き換えると、その相手の言葉はステレオのセンターに位置しているのでしょうか。
それは相手の方を向いているかどうかによる?

指揮者はどうなのでしょう。
オーケストラのコントロールしたい楽器奏者の方向を向いて指揮をおこなう指揮者。
そうではなく、いつも正面を向いて指揮している聖徳太子型の指揮者もいる。
見ているとさまざまです。

指揮者の向こうには作曲家がいる。
作曲家は自分の曲がどのような音世界を作り出すのか、その音世界はどのようなものになるのかを想像する。
作曲家も作曲の際にはコントロールしたい楽器奏者の方向を向いて聴くことができる音を想像していた、いやそうではなく?

音量の大きな現代楽器により、ステージでは音が炸裂するようになり、それは一つのドラマチックな音世界を作り出した。
歌劇場のボックス席で談笑しながら聴く時代は終わった。

作曲家の意図した音世界をそのまま聴かせてあげよう。
それを近くで聴いてみようよ。
もっと近くにおいでよ。
そう考えてワインヤード型のコンサートホールを採用した。
音が悪いそのホールと格闘を続け、不評のマルチマイク録音に挑戦し続けた。
ここら辺が傍観者との違い、かもね。






2011/12/06

JBL 2360A (7)

"JBL Professional White Paper New 4675C-HF with 2360B"に掲載されていた2360AとBの周波数レスポンスグラフです。
約420Hzから5.5kHzまでが110dBを超えて盛り上がっており、低域側のレスポンスは-6dB/octぐらいで低下しています。
これでは帯域別のEQ抜きで使用するのは難しいです。
う~む。







一方、Beamwidthのグラフはかなり優秀です。
垂直方向(Vertical)が800Hz以下では広がってしまいますが、それでも250Hz(2360Bでは200Hz)まで約100度を維持しています。






もし2360Aと同等の大きさのエクスポネンシャルホーンであれば周波数レスポンスグラフはおそらく200Hz程度までフラットなのではないでしょうか。
カットオフ周波数は変わらないものの定指向性のために軸上のレスポンスが犠牲になっているのです。
途中にスリット(ギャップ)などが設けられているため、エクスポネンシャルカーブからは程遠い変則的な広がり形状となっているためです。

JBLは、現代的なホーンの設計が様々な要素を勘案して行われていることをTechnical Note "Progressive Transition Waveguides"の冒頭で述べています。
その様々な要素とは、周波数特性(軸上及び軸外)、水平及び垂直のBeamwidth、directivitiy index、インピーダンス特性、高調波歪、そして、低域のカットオフ周波数です。
これら要素のうちいくつかの要素を重視し、その他のいくつかの要素を妥協することにより、ホーンの性格が決定されます。
そして、こうした要素のすべてがホーン臭さの強弱と関連しているのでしょう。

Horn design involves balancing compromise.
Key performance parameters that can be controlled by the designer include: frequency response (both on and off-axis), horizontal and vertical beamwidth, directivity index, electrical impedance, harmonic distortion, and low frequency cut-off.





















Beamwidthとは-6dB落ちの範囲のカバー角度を言います。
2360の米国特許に掲載されている下のグラフには軸上0°のレスポンスから-6dB落ちの箇所にマーキングがされています。
このマーキングは水平方向(Horizontal)ではおよそ310°と80°であるため、800HzのBeamwidthは約100度ということになります。
同様に垂直方向(Vertical)ではおよそ337°と23°であるため、約45度ということになります。











-6dB落ちの範囲が何故重要なのかはEAWの資料に以下のような解説があります。

"複数のスピーカーでアレイを構成している場合、システム全体のリスニングエリア内で継ぎ目のないカバーエリアを実現することが要求されます。
どうにかしてロブや相互干渉を回避しながら個々のスピーカー出力を組み合わせなければなりません。
これが実現できるのは、カバー角内で平坦な特性を持ちカバー角からはずれると極端に出力が低下するという、想像上のスピーカーだけでしょう。
このスピーカーなら互いに正しい角度で配置するだけで、継ぎ目のない指向性を作り出すことができます。"

こうした特性はまた、指向角度のエッジで公称レベルからちょうど6dB低下するような出力を持つスピーカーでも達成することができます。
この状態であれば隣り合った2本のスピーカーが合算され、2本の間で継ぎ目のない特性を提供するでしょう。
複数のスピーカーで出力を構成する場合、特性がロールオフする角度はあらゆるカバー角で完全に合算されていなければなりません。"


2011/11/27

JBL 2360A (6)

お世話になっているハイファイ堂の過去情報データベースに掲載されていた画像です。

下の画像は2360のスロート部分である2360T。
スロート口の形状は円形です。







下の画像は2360Aのスロート口です。
左右が狭くなっている小判型。





現行型である2360Bは円形です。
スロート部は2分割タイプ。







黄色いホーンは左右何れも小判型でした。
最初に見たときはひっくり返るほど驚き、がっかりしたのをおぼえています。
ホーン部は左右の形状が異なるし、これは困ったことになったと。

その後、ヨハネスさんが2360のスロート口は円形だと言うので、これは妙だと。
調べてみると最終型といえる2360Bは円形に戻っています。
JBLは2360シリーズを生産しつつ、よりよい特性に仕上げるべくいろいろと試してみたのでしょう。

一般的に定指向性ホーンのスロート部は回折スリットを形成するため、ドライバーの円形の出口をスムーズに矩形に変化させる役目を持っています。
小判型の場合はこのような変化ではないような気がします。
スナウトとスロートの間にわざわざ垂直面を持つ突起が飛び出している状態にしている。
狭まっている範囲の音圧低下が狙いなのでしょうか。





下の画像はMR94のスロート口です。
スロート口の奥が狭くなっていますが、左右方向が狭くなっている小判型とは異なり、上下方向が狭くなっています。







小判型やMR94のスロート口の形状は、それらホーンの特性をより良好なものにするための補完手段だったのかもしれません。










2011/11/21

JBL 2360A (5)

2360Aの正確な発売年はよく分かりません。
1982年度のカタログには2360Aが掲載されています。

別冊ステレオサウンドのJBL 60th Anniversaryの年表によると、2360が発売されたのが1983年、2360Aは1986年と記載されています。
日本での発売年ということなのでしょうか?
なお、2360Bの発売年もよく分かりません。

2360のホーン部には"2360H"(HornのH)、スロート部には"2360T"(ThroatのT)と表示されたステッカーが貼付されています。
2360Aはスロート部のステッカーにも2360Aと表示されています。

ホーン部の形状は全部で4種類確認しています。
最初期と思われるホーン部は、下の画像の右上のホーンです。
ヨハネスさんが所有されていましたが、その後売却されたようです。
スリット(ギャップ)が円弧形状ではなく、MR94のように直線状。
ホーン部のステッカーには2360Hと表示されていたように思います。







2番目の形状は下の画像の黄色いホーンのホーン部。
黄色いホーンシステムの左側CHの2360Aです。

2360と2360Aの初期のタイプがこのホーン部の形状。
円弧状スリットの両縁はシャープな形状です。
これを「シャープタイプ」と呼ぶことにします。






第3の形状は黄色いホーンシステムの右側CHの2360A。
こちらの円弧状スリットの両縁は丸まっています。
これを「ラウンドタイプ」と呼ぶことにします。

ラウンドタイプは2360Aの後期型。
そして2360Bのホーン部の形状に受け継がれます。
2360Aの後期型と2360Bのホーン部の形状が一致するのかどうかは未確認です。
2360Bのホーン部はご存知の通り縦方向に2分割可能に構成されており、これが2360のホーン部の第4のタイプになります。

シャープタイプとラウンドタイプを比べるとスリットの円弧の曲率がちがうことに気付きます。
ラウンドタイプの方が曲率が大きい。
それに伴いスリット自体の長さもラウンドタイプの方が短いです。






下の画像はシャープタイプ。
スリットが上下方向に長いので回折する部分の音圧が分散し低下します。
そういう意味ではこちらの方が低歪率、と理論的にはそうなる。







下の画像はラウンドタイプ。
回折スリットの両縁が丸まっているのを見ると、なんとなくウェーブガイド理論を連想します。
するとこちらの方が低歪率?

スリットは短く、さらにスリットの位置が奥まって見えます。
スリットの円弧の曲率が大きく、垂直方向の指向性を重視した設計のように思えます。






下の画像、斜め前方から見たシャープタイプ。




下の画像は、ラウンドタイプ。





側方から見たシャープタイプです。






下の画像、ラウンドタイプです。
スリットの位置は、1~2cm程度シャープタイプよりも奥まった位置にあります。
水平方向の指向性の改善はもう十分と判断、垂直方向の指向性の改善を狙っているように思えます。
この垂直方向の指向性を重視する設計思想はHP9040に引き継がれ、さらに偏指向性ホーンからラインアレイへと発展してゆきます。










Commented by johannes30w at 2011-11-22 00:54 x
2360Tじゃなかったっけ?

Commented by kiirojbl at 2011-11-22 02:11 x
う~む、よくおぼえていないのですよ。
2360Tはスロート(throat)のTだと思うのですが…

Commented by johannes30w at 2011-11-22 13:12 x
そうか~
自分とこでもはっきり書いてない。
http://johannes30.exblog.jp/2789653/

Commented by kiirojbl at 2011-11-22 15:08 x
分かっていないことが多くて。
2360と2360Aの違いもよく分かっていないです。


2011/11/16

JBL 2360A (4)

2360A、MR94B、HP9040のスリット(ギャップ)がどの位置あるのか比べてみよう。

最初は2360A。
スリットの位置はスロート口から516mmの位置にある。
従って、水平指向性用のホーン長は815mm-516mm=299mmになります。







次はMR94B。
スリットの位置はスロート口から327.2mmの位置にある。
そして水平指向性用のホーン長は389.9mm。






最後はHP9040。
スリットの位置は表示されていませんが、図面から計ってみるとおよそ520mmの位置にあり、これは2360Aと略同じ。
従って、水平指向性用のホーン長は808.2mm-520mm=288.2mmになります。







この3つのホーンの構成の相違が面白い。
定指向性ホーンだからと言って十把一絡げにはできない。
スリット位置の相違の他、2360Aの開口は正方形、MR94Bは横長の長方形、HP9040は縦長の長方形とずいぶん違う。

さらに、2360Aはラジアルホーンであり、他の2つはフラットフロントタイプだ。
さらに、2360Aはホーン壁面が曲面であり、MR94Bはステルス戦闘機のような平面構成。
HP9040は水平指向性用のホーンの内側がやや曲面でありその外側の部分は平面という複雑な構成。








2011/11/14

JBL 2360A (3)

米国特許4308932号には先行技術として以下の3つの特許文献を説明しています。

1. US2537141号
Paul Wilbur Klipsch氏のmulti-cellular radial sectoral hornの発明。
出願日は1945年6月15日。






米国特許4308932号によるとこのクリプシュ氏のホーンはmidrange narrowing、polar lobingなどの問題があったとしています。
しかし外側に大きく開いたフレアー部を持っている点は2360Aなどの定指向性ホーンの構成にやや似ています。






2. US4071112号

D. Broadus Keele, Jr.氏の定指向性ホーンの発明。
出願日は1975年9月30日。
特許権者はエレクトロボイス社。




第1の部分26はエクスポネンシャル、第2の部分28はコニカル、そして第3の部分30はコニカル、エクスポネンシャル、あるいは他の曲率のホーンとなっています。
第1の部分26と第2の部分28だけだと、ホーンの開口直径と略同じ波長の帯域においてnarrowingが発生してしまいますが、第3の部分30を加えることによりその問題を解決。
図5では円形のスロート口を矩形の第1の部分の断面に変換する形状を示しています。

米国特許4308932号は、発明者が同じキール氏だからか具体的な問題点は指摘していない。
キール氏のAESの論文はこちらを
同論文のつたない解説はこちらを





3. US4187926号

Clifford A. Henricksen氏とMark S. Ureda氏による共同発明。
出願日は1978年12月8日。
特許権者はALTEC社。






この特許についてはここで少し説明しました。
厳密に言うと、この特許に記載されているホーンは試作品でありALTEC社で実際に製品化されたものではないと思います。
MR94は横長ですし、MR64はもっとずっとスロート長が短い。







しかし、米国特許4308932号は、このマンタレイホーンの発明について"poor low frequency response"(低域レスポンスの不足)であり"nonuniform sound dispersion at some frequencies"(いくつかの帯域では音の拡散が不均一)であるとしています。

う~む。
これはMRシリーズに対するJBL社の見解なのでしょうか。
だって、ALTECの試作品を入手してテストしたわけではないでしょう。
当時、JBLとALTECの両社の関係は緊迫していたからかなぁ。





2011/11/11

JBL 2360A (2)

米国特許4308932号の続きです。
この特許公報には「何故なのか」ということが記載されていない。
そして最愛の2360Aは常に無言である。
仕方がないから延々と考え込む羽目になる…




下の画像(同公報の図2)において角度AはHorn throat included angleと呼ばれている。
この角度Aは経験則からBeamwidth angle Bの90%になるのだそうだ。

A=0.9B

Beamwidth angleは2360Aの場合、90°x40°だ。
この図2ではホーン壁面が16aと16bになっているので角度Bは水平方向の指向性である90°になる。
すると角度Aは81°(公報実施例では80°と表示されている)ということになる。

次は、ホーンの開口幅Wを決定する。
この開口幅Wは、上記角度A、最低限界周波数F、そして定数Kから求める。

W=K/AF

定数Kは25000m・degrees・Hertzだそうだ。
角度Aの81°と周波数Fの400Hzを代入すると約0.77mとなる。
この0.77mはホーンの内側寸法であるから2360Aの外側寸法である0.795mと概ね一致する。





次にホーンの開口幅Wを1.5で割ってW'を求める。
このW'は上の画像(図2)において角度Aと対応している。

W'=W/1.5

そして下の画像の式によりホーン長Lを求めることが出来る。
なお距離Dは角度Aの交差位置からスリット(ギャップ22)までのオフセット寸法である。






このあとは公報に記載されている冪数の数式に上記各計算式で得た解を導入すればホーンカーブを決定することができる。




数式を単純に追うのであればここまではいい。
問題はない。
しかし、上記の話は16aと16bという水平指向性用のホーン壁面についてである。
もちろん、垂直指向性用壁面の18aと18bについても同様の計算をするわけであるが、そうするとスロート部を構成する26aと26bという平行な壁面は上記16aと16bにおけるホーン長Lとは計算上無関係ということになってしまう。







2011/11/10

Subscription Concert No.724 at Suntory Hall

東京都交響楽団の第724回定期演奏会に行ってきました。








指揮はヴォルフガング・ボージチさん。
ピアノはフレディ・ケンプさん。
曲目はモーツァルトピアノ協奏曲第23番とR.シュトラウス家庭交響曲。

モーツァルトのピアノ協奏曲は楽しかった。
グランドピアノの蓋の角度のせいでP席ではピアノの音量が足りないように感じるのですが、今回はそういう感じが少なかったです。
ケンプさんのピアノの存在感があったのか、それともオーケストラと呼吸が合っていたからなのか。
良かったです。

家庭交響曲はパワフルでスケールが大きな演奏。
この交響曲、家庭を描いたものらしいですが、どうにもそんなイメージを思い浮かべることできないほどダイナミック。
家庭内が劇的!というのは幸せなことなのだろうか?と考えてしまいました。










最近はマルチアンプの調整を交響曲で行っている。
先日久しぶりに女性ボーカールを聴いてみたら、あまりのバランスの良さに仰天した。
生の音に接していることが何より大切だ。



2011/11/09

DIY Speaker (47)

2回目のFRP作業をしました。
1回目にできなかった部分のほか、1回目で作業した部分に積層しました。
FRP層の厚みは正確にはわかりませんが1cm以上になっており、もう十分だと思います。

デッドニングについては以前にも触れましたがより硬質の2液タイプのウレタンフォームを使用することを検討中です。
この手の硬質ウレタンフォームは剛性がありレーシングカーのサイドシル等に充填されているそうです。
EAWでは約3mm厚の合板と高密度ウレタンフォームを組合わせてホーンを製作しています。

Design Engineer Sam Appleton explains the approach.
"We use very thin plywood, about three millimeters, cut to fit this complex curve.
Of course the thin plywood is resonant and even transparent to low frequency sound waves.
So we fill the cavity behind the flare wall with a high density polyurethane foam that soon hardens and makes an acoustically inert, reflective structure.
It effectively becomes the side of the horn, just covered with a thin piece of plywood."








FRPが硬化した後、サンドペーパーで全体をならしました。
ポリパテ作業の準備です。







フランジ部の四隅においてフリースへのポリエステル樹脂の含浸が不足していたようでフリースが部分的に合板から浮いていました。
木工用ドリルで合板まで浅く座繰り、小さじを使用してポリエステル樹脂を少量注ぎました。
これはうまくいきフランジ部の浮きは完全に固定されました。





フロート口の周囲もサンダーで仕上げました。
合板のはがれた部分等はパテで修正する予定です。






フランジ裏側のフリースの折り返し部分もサンダーで仕上げました。







フランジの角の部分、あやまって結構激しくぶつけたりしたのですが欠けていません。
フリースとポリエステル樹脂の組み合わせでもかなり強いです。
このフランジには円形ホーンの開口周囲の反射を不均一にするという効果を期待しています。




2011/11/08

JBL 2360A (1)

黄色いホーンはJBL 2360A。
この2360Aについては米国特許4308932号があります。
勉強するにはもってこい。







簡単に言えば水平指向性を決める側壁16a、16bと垂直指向性の18a、18bの広がり形状をそれぞれpower series formula(冪数式/べきすう)で決定し、それをギャップ22で出会わせるという構造。
バイラジアルとは、この水平指向性用の側壁と垂直指向性用の側壁の2つの曲面を指しています。
Horn throat included angle AがBeamwidth angle Bの90%となる経験的な計算式から開始されるのが特徴的。

この特許公報の内容は難しくはないもののあまり面白くない。
何故そうなるのかが説明されていない。
それにこの公報の情報だけで2360Aを設計することはできないように思います。
だってギャップ22の幅はどうやって算出するの?




なお実施例として掲載されている下記の各寸法の数値は2360Aと略同じです。








2011/11/05

DIY Speaker (46)

紙管を取り外しました。
下の画像の楕円形の黒っぽい部分が紙管が接触していた部分です。
この部分のフリース生地は紙管に押され生地が圧縮されていたためかポリエステル樹脂が裏側まで浸透していました。
紙管に巻いておいたサランラップ(cling film)のためにポリエステル樹脂が紙管に貼りつくようなことはありません。
その紙管は木工用ボンドで部分的に固定されているため紙管上部を切断して少し力を加えるだけで簡単にはずすことができました。
支柱部の内側に見えている小さな木片は紙管の位置決め用。

ホーン部は完全に硬化しており、紙管をはずしても形状がゆがむようなことはありません。
紙管が接触していた周辺部はまだFRP作業を行っていません。
発注しているポリエステル樹脂が届いたら第2回目のFRP作業をします。









FRP作業をした部分は60番のサンドペーパーで表面を荒らしています。
これはパラフィン層を除去するためです。
マスク装着のこと。

ポリエステル樹脂は空気と触れていると硬化しません。
このためポリエステル樹脂にパラフィンワックスを混入し、ポリエステル樹脂の表面にパラフィン層が形成されることにより、ポリエステル樹脂と空気が接触することを防ぎます。

しかし、パラフィン層があると2回目のFRP作業のポリエステル樹脂が先のポリエステル樹脂層にくっつかないのです。
そのためパラフィン層をサンドペーパーで除去するわけです。

ポリエステル樹脂には「パラフィンワックスなし(ノンパラ)」と「あり(インパラ)」の2種類あります。
今回使用しているのはワックス入り(インパラ)タイプです。







今回FRP屋さんに発注したFRPの材料等は以下の通りです。
なお「ホワイトパテ4キロ」というのはホーン表面を平滑にするためのものです。
さらにスロート部やイコライザ等の様々な形状をこのパテで造りこめるのではないかと期待しています。

FRP用ガラスマット1.0kg 100cmx263cm 666円x3個 = 1998円
ホワイトパテ4キロ ポリパテ 2838円x2個 = 5676円
パテヘラ45ミリ 151円x1個 = 151円
アセトン500mL 476円x2個 = 952円
一斗缶ベロ注ぎ口 98円x1個 = 98円
FRP国産樹脂20kgワックス入 8553円x1個 = 8553円
FRP硬化剤1000mL 1999円x1個 = 1999円

小計 19427円
消費税 964円
送料 0円
代引料 315円
合計 20706円


FRP屋さんで入手したガラスマットはJBL 2360AやALTEC MR94Aに使用されているガラスマットよりも細く上質な印象を受けます。
こうしたガラスマットにはおそらく様々なグレードがあるのでしょう。









FRPと一口に言っても樹脂の種類(エポキシ樹脂やポリエステル樹脂)それからガラス繊維の種類としてガラスマットの他にガラスクロスもあります。
さらに高級なカーボン繊維やケブラー繊維もネットショップで容易に入手可能です。
グランセプターGS-1(オーディオ懐古録オーディオの足跡)ではFRPとダンプ材を積層しているそうです。
今回はそうした異なる材料との積層は行う予定はありませんが、FRPの積層作業はいつでも追加できます。






FRPについて学ばせていただいたサイトです。

まずは作ってみてナンボ! 速攻FRP講座
まずは作ってみてナンボ! 速攻FRP講座 その2
FRPの離型剤と下地素材の邪道編

なお、ポリエステル樹脂に「はかり」はいらないです。
料理用計量カップで計った水を紙コップに注いでマーキングしておけば樹脂量は計れます。
一方、エポキシ樹脂は正確な計量が必要です。




 

2011/11/03

DIY Speaker (45)

硬化完了、カチカチです。
今度は歪が発生しませんでした。







マスク装着、FRP作業に入りました。
ガラスマットに触るのは初めて。
はさみで切ってみます。
ガラスマットはしなやかで紙のように簡単に切れます。

ポリエステル樹脂に入っている溶剤によりガラスマットのガラス繊維同士をくっつけているバインダーが溶けるため、硬化剤を混ぜたポリエステル樹脂を塗りつけるとガラス繊維がほぐれます。
ガラス繊維自体が柔らかくなるわけではないのですが、まるで鱶鰭のようです。
なお、ガラスマット片の大きさは画像のような大きなものよりも20cmx10cm程度の方が扱いやすいです。

ベル部の裏側までポリエステル樹脂が浸透していないためパラフィン層が露出していません。
このためパラフィン層をサンドペーパーで削り落とす必要がありません。

最初にポリエステル樹脂をベル部の裏側に塗り、それからガラスマット片を置き、刷毛でそのガラスマット片にポリエステル樹脂を塗り込みます。
急いでもバインダーが溶けませんからゆっくり作業を進めます。
適度に隣り合ったガラスマット片同士を重ねながらこの作業を繰り返してゆきます。






意外と簡単です。
FRP作業は初めてですがなかなかの仕上がりになりました。
なお、白くなっているのはガラス繊維が毛羽立っている部分であり気泡ではありません。






ここまでの作業でポリエステル樹脂を4kg使用しました。
というか、缶が空っぽになってあえなく作業終了。




2011/11/02

DIY Speaker (44)

ポリエステル樹脂を塗りました。
1年ぶりです。
薄め液であるスチレンモノマーは使用しませんでした。
収縮率が大きくなってしまうからです。
硬化剤は多め。

最初にスロート口と縁の裏側を塗りました。
ちなみにブレーキクリーナーはアセトンの代わりにはなりませんでした。







ベル部分は渦巻状に開口側からスロート口へと塗りすすめました。

塗りあがってみると…塗りムラが気になります。
う~む。





ベル部の裏側は浸透していません。
うむむ。






フリースが濃い色になり色だけはホーンらしくなった。






Dual Directivity Circular Horn独特の光景。