2017/11/18

DIY Speaker (86)



池田圭さんの音の夕映、ついに購入してしまいました。
なんとなく読むのが怖かったのですが、どうせいつかは読まねばならぬと。
一気に読むのは惜しいので、ぽつぽつ読んでます。
ある意味、思った通りのコワーイ本でした。
ぶるるっ。




下界を眺める可からず」とか、「ウェスタンエレクトリック15Aホーン」などは、この音の夕映に収録されていました。
巻末の「附図」の中に「周波数帯域と聴感覚」の対応図(富田義男氏によるエレクトロニクス講座・応用編1、共立出版)が掲載されています。
なるほどなるほどと、見入ってしまいました。
「この帯域が強調されると」や「この帯域が弱まると」などの表現は経験的に理解できますが、全体的にもうちょっと低い帯域のような…




マルチウェイの場合、帯域分割の周波数を選ばなければなりません。
これをどんな風に考えればよいのか。
市販のシステムや個人のシステムを問わず、帯域分割の周波数が記載されていると、その意図を読み取ろうとします。
これが楽しいし勉強になる。
ちなみに、黄色いホーンシステムの帯域分割はこんな感じです。

PD.2450  -50Hz
1808-8HPS  50Hz-111Hz
1008-8HE  111Hz-249Hz
2490H  249Hz-897Hz
2446H  897Hz-4.02kHz
2431H  4.02kHz-8.5kHz
DE500  8.5kHz-
2402H-05  10.1kHz-

上記の「周波数帯域と聴感覚」の対応図と比べてみると、「中音域」と「中音高域」の2つが2490H、「高音低域」と「高音域」の2つが2446Hの守備範囲ということで、それ以外の帯域分割は、黄色いホーンの帯域分割と近いです。
(2490Hと2446Hの帯域が欲張っているのは、これは当然というか…)
「周波数帯域と聴感覚」の対応図では、この手の帯域分割の話と同様、1kHzが中心周波数になっているようです。

中心周波数が1kHzというのは音響学的に別の意味(聴覚的に敏感な帯域としての区切りなどかしら)があると思いますが、マルチウェイシステムの帯域分割ばかり考えていると、帯域分割の中央?周波数とも受取れるのです。

黄色いホーンシステムでは、これが900Hzなのです。
100Hzほど低域側に寄っている。
これがJBLになると1.2kHzぐらいでしょうか。
例えば、4ウェイのJBL4350のクロスは、250Hz、1.1kHz、9kHz、4343は300Hz、1250Hz、9500Hz、4345は290Hz、1.3kHz、10kHz。
また、JBL5732(下の画像)は、250Hz、1.3kHzになっており、それぞれ、ユニット構成などが異なりますが、ミッドの帯域はある程度共通しているように思います。




今回の自作ホーンシステムの場合は、ミッドホーンの受持ち帯域がどうなるかで、システム構成が影響を受けるということが分かっていました。
守備範囲を2オクターブ、中心周波数を1kHzにするなら、ミッドは250Hzから1kHz、ミッドハイは1kHzから4kHzになります。
これが800Hzになると、ミッドは200Hzから800Hz、ミッドハイは800Hzから3.2kHzになる。
1.2kHzなら、ミッドは300Hzから1.2kHz、ミッドハイは1.2kHzから4.8kHz。
現在構築中の自作ホーンシステムでは800Hzになると思います。

ミッドホーンの予想していた受持ち帯域は下限が200Hzから350Hz、上限が800Hzから1.4kHzぐらいと考えていました。
下限はご存知のようにホーンのカットオフ周波数が大きな影響を持ちます。
エクスポネンシャルホーンではなく、複合コニカルを考えていたので、カットオフ周波数ははっきりと計測できず、おそらくは-6dB/octのだら下がりの特性になると予想していました。
一方、上限に関しては、どの程度高域が延びるのかは予想がつきませんでした。
イコライザーを備えていないため、せいぜい2kHz(無理か?)、こちらも-6dB/octのだら下がりの特性になるのではなかろうかと予想していました。



2017/11/02

DIY Speaker (85)



(84)の続きです。

DCX2496が1台だけという状況なので、サブウーファー抜きの3ウェイマルチアンプの状態で稼動させることにしました。
最初の作業は、DCX2496の設定。
クロスオーバー周波数は、とりあえず200Hzと800Hzにしました。
何れも遮断特性はL-R48dB/oct。

200Hzというのは希望的な数値です。
ミッドはホーン長が短いため、200Hzはとても無理で、おそらく250Hzとか300Hzぐらいからしか使えないのではないかと予想していたからです。
なお、800Hzというのは200Hzの2オクターブ上の周波数ということで選びました。
とりあえずのレベル調整は、ローが0dB、ミッドが-5dB、ハイが-10dBとしました。




まず、松田聖子さんのCD(リッピングしたデータ)を小音量でかけて、各ユニットから設定された帯域の音が出ているかを確認します。
この段階で、ミッドホーンの能率が思っていたよりもかなり高いことに気付きました。
問題はなさそうなので、普通の音量(大音量ではない)にして、ざっとレベル調整をします。
ミッドとハイのレベルを下げました。

次に、DENONのオーディオチェックCDの出番です。
最初は、トラック10のチャンネルチェックです。
左信号が右スピーカーから、右信号が左スピーカーから出ていました。
DCX2496のルート設定を変更して解決。
次は、トラック11の位相チェックです。
最初は全帯域で聴いてみます。
大丈夫みたいです。
次に、DCX2496のミュートを使用して、ロー、ミッド、ハイのそれぞれの位相をチェックします。
これも大丈夫みたいです。
左右チャンネルにおいては各帯域ともに逆相にはなっていませんが、松田聖子さんのボーカルが引っ込んでいたのを思い出し、DCX2496でハイ(JBL 2451H)を逆相に設定します。
スピーカーケーブルの接続は、ユニットの極性にかかわらず赤は+黒は-で接続しているため、極性が逆の2451Hは、当然逆相で動作していたわけです。
DCX2496の設定を変更してこれも解決。

松田聖子さんのCDに戻し、普通の音量からやや大き目の音量(大音量ではない)でレベル調整を続けます。
大音量のレベル調整は聴感覚をマヒさせ、ろくな結果にならないからです。
ほどなく、ミッドが-10.5dB、ハイが-15dBになりました。
レベル調整がすぐに決まってしまうのは、各帯域の特性に大きな乱れがないということです。
それにしてもホーンキャラクターが全く感じられない…

かなりいい雰囲気で鳴っています。外観に似合わず豪快かつ鮮明な音。
ならばと、測定用マイク(ECM8000)をDEQ2496に接続し、DEQ2496とSRC2496を光ケーブルで接続、測定をしてみました。
全体の傾向を見たいのでマイクの位置はリスニングポイントです。




レベル調整だけでEQ等は使用していません。
一部を除き、±3dB以内に収まっています。




 DCX2496のミュートを使用して、ミッドだけ鳴らした状態。
うれしいなぁ、これ200Hzから使えます。




同様にハイだけ鳴らした状態。
おおっ、1kHzから4KHzが盛り上がっていて2360AやMR94を連想させます。
8kHzから16kHzがやや盛り上がっているのは、この帯域で回折効果が不足していることを暗示しています。




同様にローだけ鳴らした状態。
これはどうでもいいか。

大成功です。うれしいなぁ。
これでホーン設計の技術解説がやっとできます。
シビアな測定はユニットのエージングが終わってからでしょうか。







新たなスピーカーシステムを作ろうと考え始めたのが2010年の8月ごろ。
それから7年後、2017年10月30日に音出しになりました。
音出し、というのはあまりにお気楽な感じなので、進水式にならって出音式というのはいかがでしょう?
「…2017年10月30日にようやく出音式を迎えることになりました。」うん、これなら。

黄色いホーンシステムの出音式のときに、エルガーの戴冠式行進曲op.65を鳴らしたことを覚えています。
験担ぎにまたこの曲を選びました。
暗黒のオーディオ海に乗り出そうとする新システムの安泰を願って!








<出音式>
インドかどっかの出音神に新スピーカーシステムの安泰をお願いする儀式のこと。
「出音」の発音は、でおと、でおん、しゅつおん、などがあるが、どれでもいいし、どうでもいい。
出音式の特徴として、出音直後から主催者、列席者共に苦虫を噛み潰したような顔になることがあげられる。

出音式が公に認められるようになったのは英国偽王立出音協会(仮)が1910年代初頭に設立されてから。
このとき同協会(仮)がエルガーに出音式典序曲の作曲を依頼し、op.65(裏)が完成する。
エルガーは、「逆相接続になってた、ごめんごめん状態」でも十分に楽しめるよう、この作品において第二ヴァイオリンの逆相演奏を譜面に指示しており、この余計なお世話のため、op.65(裏)は演奏困難な難曲として知られることになった。

オーディオ界がお先真っ暗というかすでに消滅している現在、出音式などという行事は完璧に忘れ去られており、ごくたまに奇人変人のたぐいが「うははっ、出音式、執り行っちゃったよぉ!」とネットで自己申告する程度。はっきり言って、きもい。