2013/02/27

JBL 2332 and 2352 (14)

2352を同じような性能をもつ2380Aと開口部の形状を比較してみると、2352の縦方向の寸法は2380Aよりも随分大きいことが分かります。
2352の縦寸法は457mm、2380Aのは279mm。
2352では垂直方向にもフレア(added flare)を設けて開口縁での反射を低減している、と説明することができますが、こうした寸法のちがいは垂直指向性における低域側の限界周波数を引き下げる効果も持っています。


定指向性ホーンのカットオフ周波数の考え方は、音響インピーダンス整合の限界周波数とするエクスポネンシャルホーンの考え方とは大きく異なります。
定指向性ホーンでは、「所定のパターンコントロール角度の維持が可能な限界周波数」という考え方を採るためです。
さらに、この限界周波数は当然のことながら、水平指向性と垂直指向性のそれぞれについて決定されることになります。
ですから、定指向性ホーンの低域側のカットオフ周波数は、「水平が358Hz、垂直が806Hz」というような表示になります。





上の画像はJBLの"Audio Engineering for Sound reinforcement"の139ページです。
ここには、定指向性ホーンにおける最低周波数の計算式が掲載されています。

「f0=1000000/θh

f0: 低域側限界周波数
θ: -6dBパターンコントロール角度
h: ホーン開口寸法」

これはキール氏のJBL 2360の米国特許公報に記載されていた例の計算式、W=K/AFと実質的に同じです。
定数が25000m・degrees・Hertzと記載されていたので、25000とはおかしな定数だなぁと思っていたら、要するにホーンの高さと幅寸法をインチ単位で計算するからこんな定数になっていたのです。
米国特許に記載されているパターンコントロール角度は0.9B、1インチ=0.0254mということで計算するとだいたい似たような値になると。

そして"JBL Audio Engineering for Sound reinforcement"の解説には、こんなことが書いてあります。

「上記の計算式、f0=1000000/θhは、垂直指向性と水平指向性をそれぞれ計算して求めなければならない。JBL 2360の場合、ホーンの水平、垂直の寸法は何れも31インチ。90°の水平指向性を維持できる低域側の周波数は、f0=1000000/θhという上記の式から358Hzとなる。同様に40°の垂直指向性の低域側の周波数は806Hzになる。」

上記説明の文章には低域側の限界周波数について、パターンコントロールの最低カットオフ周波数(the lower cutoff frequency for pattern control)という表現が用いられています。
これからも分かるように、定指向性ホーンのカットオフ周波数の概念は、エクスポネンシャルホーン等のカットオフ周波数(音響インピーダンス整合が可能な限界周波数)とは、全く異なる考え方に基づいています。

エクスポネンシャルホーン、ハイパボリック、トラクトリックス等のホーンの軸上のレスポンスがフラットな状態をして音響インピーダンス整合がとれている、などと説明されても、軸外のパターンコントロールが出鱈目では「整合」の意味がありません。
定指向性ホーンの出現により、音響インピーダンスのマッチングという概念に基づくカットオフ周波数はホーン設計における絶対的な要素ではなくなりました。


2013/02/22

JBL 2332 and 2352 (13)

2352のホーン形状、特にスロート部分の形状を観察してみよう。


水平方向においては、Cの狭まった部分にスリット(ギャップ)が形成されており、ここで回折現象が 生じる。
この回折現象により、フェーズプラグの端面に発生した超高圧の音の塊が分散されます。
そして、この分散範囲は、Bのウェーブガイド部分により指向性を与えられる。
Bの壁面の広がり角度は90°の指向性を公称する場合、およそその90%である80°近辺になります。
なお、Aの部分はホーンの縁部での反射を和らげる部分であり、キール氏の論文によればBの広がり角度の2倍になります。
また、Bの部分の軸長は、Aの部分の軸長の半分になる。


 

この2352は、JBLによるとバイラジアルホーン(optimizied aperture bi-radial horn)とされていますが、"added flare"であるAの部分がラジアルであるだけであり、 ホーンの主要部分であるBの部分はコニカルホーンです。
この部分をコニカルで構成するウェーブガイド理論の影響だとは思いますが、複合コニカルで構成されているALTEC MR94の音の素直さにJBLは気付いていたのではないか?



水平方向に対して垂直方向の形状は、図面を見ている限り単純に見えます。
即ち、コニカルホーンであるBの部分とその外側に広がるAの部分だけ。
しかし、水平方向のCの部分により、垂直方向においてもフェーズプラグの端発生した超高圧の音の塊が分散されます。
超高圧の音の塊は、Cの部分を通過することにより、スリットの縦長の長方形状に分布するように導かれてゆきます。
下はHiFi堂のデータベースに掲載されていた2352の画像です。


下は2352の姉妹機である2332。
このスロート部分も同様の形状を有しています。


しかし、2352において、Beamwidth vs. Frequencyのグラフ図を見ると、この垂直方向の分散はうまくいっていないような気がします。
垂直指向性(Vertical)が2kHzから8kHzに向かってどんどんナローになっていく傾向は、2352だけではなく、2332や2380でも見られます。
こうした傾向を持たないのは2360です。
おそらく、2360の軸長の長いスロート部により、垂直方向の音圧分布が十分に均一化されるのだと思います。











ビールぐらいしか飲まない。

もらいものの赤ワインを電子レンジでホットワインに。
クローブ、シナモン、カルダモンのパウダー。
もらいものの蜂蜜を加える。
もらいもののメープルシロップも大量にあまっている…

うまい、です?






2013/02/19

DIY MR94 of S-san and his friend (2)

Sさんのご友人によるDIY MR94の製作過程です。
さあ皆さん、ディスプレイを穴があくまで見つめてください!



材料は18mm厚のバーチ合板だそうです。
この合板の大きさは1200mm×2400mmでしょうか?


なんだかプロの工房のような雰囲気です!


原寸大の型紙と冶具です。


なるほど、角度がある場合、紐にテンションを与えて圧着するのですね。


接合部分には組み木がしてあります。
凄い木工技術!


組み上がった上下のホーン壁面部材に左右の部材を慎重に組合わせているところです。



う~む、この接合過程が一番難しいような気がします。


おおっ、ベル部分が組みあがりました。


隙間もなく組みあがりました。
完璧な手際!!


ん? これは何をしているのでしょうか??


端の余分をカットしたのですね。
この工具、なんていうのだろう。
見たこともありません。


そして 綺麗に仕上げる。
いつもサンドペーパーをとりつける安価なサンダーを使用していますが、これは別物のようです。
なんだか物凄い迫力の工具です。


これは縁部分ですね。
シロートには到底無理だと思われる凄い木組みです。


この4つの穴はなんでしょう?


おおおおっ!
ダボで組み付けるとな!!


 ホーン部がこうして完成。


 スリット部の周囲は積層構造!


積層部分も謎の工具できれいにしています。



JBL 2365のスロート部分はちょっと短いので、スロート部分を延長するための延長スロート部分を製作されたようです。


縦にするとこんな具合です。
積層の厚みが凄い。


延長スロート部の貼り合わせにもダボ!
う~む、ダボってやったことないです。
なんと素晴らしい。


美しい仕上がりです。
どうするとこんなにきれいに仕上げられるのでしょう?


JBL 2365のスロート部分の内壁面ともきちんと整合しています。
なんという工作精度の高さ!


JBL 2365のスロート部分を取り付けて完成。
素晴らしい仕上がりですし、とても立派です。
脱帽です。感動しました!
貴重な画像の提供、ありがとうございました。






 

Sさんにいくつかの質問をしたところお返事のメールを頂きました。

「さてお尋ねの件ですが資料室にてご指摘のとおり以前の写真に写っていましたのが1号機で私が所有しているものです。
そして友人の物は2号機になりまして、もう一台同じ物を保管しておりますので計3組製作しました。
JBL 2365Aのスロート部の2365Tを使用したのは私のモデルだけであり、他のものはそれを参考にしてバーチ合板にて製作されています。」

下の画像は1号機を試されているころのご友人のシステムです。
見事な木製ラジアルホーンもきっとご友人のお手製なのでしょう。
凄いなぁ…




下の画像はそのバーチ合板製のスロート部です。
ドライバーはBMSの4592NDですね。


「友人に製作時に工夫した点は?と聞きましたら特にないという素っ気ない返事でした。
彼は今まで10台以上木製ホーンを作って来ていますので以前の無垢材や集成材を使った大型ホーンに比べると楽だったとのことです。
後ほど製作時の写真を送らせていただきますので参考までに。」

やはりご友人の方はホーン作りのベテランさんだったのですね。
本当に凄い木工技術です!







「ALTEC MR945AとMR94との比較についてですが、MR94の音質レベルを探る為に購入しましたのでまったくの同条件で比較出来ませんでした。
しかし、MR94より945Aの方がかなり元気な音が出ていたような気がしています。
特に高域において。
これは恐らくスリット部の開口寸法の違いからきているのでは無いかと推測しています。
特にスリット部の幅がMR945Aが3cm、MR94が2cmでこれが一番効いているのではないかと。
MR94はkiirojblさんもおっしゃっていますように素直な音質と言うのに尽きると思います。」

下の画像は、MR945Aを試されている頃のSさんのシステムです。

 
定指向性ホーンのカットオフ周波数は水平、垂直指向性のそれぞれ低域側と高域側の4箇所にあります。
MR945AやMR94の水平指向性の高域側のカットオフ周波数はスリット幅により決定されるため、Sさんのご指摘は正しいと思います。
スリット幅が広がると、能率は上がり、高域の指向性が急激に狭くなる周波数が低くなるからです。
 
 
 
 
 
「DIY MR94に組合わせているドライバーは、私はSelenium D405 TRIO、友人はBMS 4592NDです。
聴き比べてみると着色が無く正確な音を出すのはBMSです。
これほどの高性能ドライバーは他にあまり無いのではと思う程です。
しかし同軸タイプのこのモデル(4592ND)はトゥイーターの音も出してしまうといくらイコライザーで補正しても納得いく音は出ませんでした。
やはりスロート部の長さが影響しているのではないでしょうか?
そこでBMSのトゥイーター部を殺し、私が同時に購入していましたSelenium ST400 TRIOを付け加えてみますと
素晴らしいバランスで鳴りだしました。
オーディオを始めて長いのですがこんなに美しい高域を出すトゥイーターは初めてお目にかかりました!
これには友人も同意見でSeleniumのサイトを覗くとこのモデルが製造中止になったようで二人とも予備にもう1セット購入した程です。」

「D405 TRIOの音には正直、癒されます。
BMSほどの正確さは感じられないのですが、これがフェノリックの音なのでしょうか。
音に潤いがあって手放せません。」



下の画像は、SさんのD405 TRIOとST400 TRIOです。
大規模自作ネットワーク!



確かにST400 TRIOがセレニウムのサイトに表示されていない時期がありました。
Selenium ST400 TRIOは、現在JBL Selenium ST400 BLKになっており、黒色の塗装仕上げになってしまいました。
ST400 TRIOと ST400 BLKのスペックシートのデータは完全に一致しており、外装以外は同一製品のようです。
また、ST400は、JBLのMarquis Dance Club Seriesに搭載されています。








Sさん、そしてご友人の方、貴重な情報、大変ありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。


2013/02/16

DIY MR94 of S-san and his friend (1)

SさんDIY MR94です。
ウッディな雰囲気が素晴らしい!
また、大変精密に作られているように思います。
JBL 2365のスロート部と組み合わされています。


上の画像、Sさんのスピーカーシステムの概要です。

Sub Woofer  Peavey 1808 SPS BWX アイソバリック
Woofer        GPA 515-8HHP
Mid-Low        DIY MR94(スロート部はJBL 2365)+Selenium D405 Driver
Mid               ハードメイプル製ホーン+Radian 475 Driver
Mid-High       Selenium ST400 Trio
High              ハードメイプル製小型CDホーン+BMS 4540ND

エンクロージャーとDIY MR94はバーチ合板の30mm厚と18mm厚で製作されたとのことです。


下の画像はご友人のシステムです。
現在のSさんのシステムに搭載されているMR94は、2012年5月に頂いたメールに添付の画像では、ご友人のシステムに搭載されていました。
ですから現在のSさんのシステムのMR94が一作目で、現在のご友人のシステムのホーンが二作目なのでしょうか?
よく見比べてみると縁部分の幅が異なります。


ご友人のシステムの概要についてのSさんの説明です。

「ウーファーはPeavey 1508 HE BWX からPrecision Devices PD.1550に変更されています。
600Lの密閉箱にはアダプターを介してPeavey 1801 を 同相接続でアイソバリック化しており、従って、18インチユニットがもう一台ボックス内に収まっています。」

「Peavey 1508 HE BWX を箱から取り外し、Precision Devices社のPD.1550を取り付けると音の出方がまるで違うのに仰天しました。
その立ち上がりと立ち下がりの速さに格段の差があるように思います。
私のシステムのGPA515-8 HHPよりもアグレッシブな感じです。
PD.1550とGPA515とは、総重量もマグネットの強力さもさほど変わらないのにこの差はなんなのでしょう?
PD社の製品に興味を持ちました。」



2013/02/08

TOSHIBA Grand Concert 2013 at Suntory Hall


妻が第32回東芝グランドコンサートのチケットを2枚もらったので、二人で行ってきました。






ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団。
指揮はヤニック・ネゼ セガンさん。
ピアノはヤン・リシエツキさん。
曲目はベートーヴェンピアノ協奏曲4番と、ラフマニノフ交響曲2番。

ピアノ協奏曲、素晴らしかったです。
2階席の後ろの方でしたが、ヤンさんのダイナミックな演奏の熱気が伝わってきました。
オーケストラはそのダイナミックなピアノに遠慮することなく、重厚で格調があり、しかし、若々しくアグレッシブという、これまた非の打ちどころのない演奏。
感動しました。

交響曲も素晴らしかった。
指揮者のヤニックさん、指揮台から落っこちるのではないかと思うほどの熱演。
第3楽章が夢のように美しかった。
参りました。

なお、オーケストラの配置が変わっていました。
中央奥がコントラバス、上手側の壁面前にティンパニと大太鼓。
コントラバスの手前にチェロがあり、低音を中央に集めたような配置でした。

というわけで、すっかりロッテルダムフィルハーモニーのファンになってしまいました。
CD買おうっと。







先日、NHK美の壷の土鍋の番組を見て、伊賀長谷園の土鍋を購入した。
それから山田工業所の中華鍋GEOのステンレス鍋を6種類銅製の天ぷら鍋を立て続けに注文。
最後に燕市の山崎金属工業株式会社(YAMACO)のFishmotifのカトラリーを購入した。
米国の販売サイトはこちら(Yamazaki Gone Fishin)

5組とサービススプーン/フォークで約4万円もしたが、重厚感がまるでなく、デザインのみで正面から勝負している感じ。
山崎金属は1918年の創立。
ノーベル賞の晩餐会のカトラリーも供給しているという老舗ですが、こういう製品も作れるというのはたいしたものです。









2013/02/06

Mr. Exclusive's DIY MR94


エクスクルーシヴさんDIY MR94です。
初めてこの画像を見たときはうなってしまいました。
大型定指向性ホーンに挑戦するという決意が凄いし、木工技術も凄い!
さらに驚くべきことにJBL 2490Hと2392のスロート部が取り付けてあります。
これには本当に驚きました。
2360にも凄いドライバーが取り付けてある!






以下は、エキサイトの旧資料室における書き込みです。

Commented by エクスクルーシヴ at 2012-12-17 15:26 x
初めまして、エクスクルーシヴと申します。
豊富な資料・情報をよく拝見させて頂いてます。
ところで私、JBL 2490Hを入手したのですがホーンが無く、このページのDIY MR94を参考に自作してみました。音はともかく何とか形は出来たようです。http://ex2009.exblog.jp/18955997/
この記事のおかげと思い感謝致します、ありがとうございます。
今後も幸せの黄色いホーン様の記事拝見させて頂きますので、よろしくお願いします。


Commented by kiirojbl at 2013-01-30 06:58 x
はじめましてエクスクルーシブさん。
ブログ拝見させていただきました。
素晴らしいです!
MR94の採寸をした甲斐がありました。
とてもうれしいです。

一つ質問があります。
2392ホーンのスロート部の大きさに合わせてホーン全体の大きさを拡
張されたのですか?
それから、もしよければ赤いホーンの画像を使用してもよろしいでしょうか?
資料室で紹介したいと思っています。
これからもよろしくお願いいたします。


Commented by エクスクルーシヴ at 2013-02-02 10:49 x
どうもお返事ありがとうございます。
>MR94の採寸をした甲斐がありました。
実物から採寸されたのですか、勝手に利用させていただき、それはありがとうございました。
>2392ホーンのスロート部の大きさに合わせてホーン全体の大きさを拡張されたのですか?
そうです、縦横だけドライバーに付属していたスロートアダプター開口寸法分拡大しました。前後寸法は同じです。
赤いホーン画像どうぞご使用ください。
ブログリンクさせていただきます。
こちらこそこれからもよろしくお願いします。







赤いホーンが実に印象的。
エクスクルーシヴさん、リンクをありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。




Sさん
ブログ作りましたか?
もし作られていないのならSさんのホーンも紹介したいのですが…