2013/01/25

JBL 2332 and 2352 (10)

ホーンからVividな音が出るのは何故か?ということを最初に考えておく必要があります。
これが理解できないとホーンの仕組みの話をしてもイメージできない。

Vividとは(色彩・光などが)鮮やかな、鮮明な、強烈な、というような意味です。
オーディオ雑誌で使用されている原音再生という言葉は究極的にはVividな音を再生できるかどうかということを問題にしています。

マイクで音を拾い、それを電気的に増幅し、最後にスピーカーから音を出すというのがオーディオシステム。
これを少し詳しく見てゆくと、こんな具合です。

(1)楽器から音が出て、
(2)音が空気中を伝播し、
(3)その音がマイクの振動板を振動させる。

(4)マイクの振動板の振動は電気信号に変換され、
(5)アンプでその電気信号を増幅、
(6)増幅された電気信号がスピーカーに供給される。

(7)スピーカーの振動板が振動し、
(8)音が空気中を伝播し、
(9)聴取される。

(1)の楽器から音が出る、というのはヴァイオリンの弦やシンバルの金属板の振動が空気を"叩く"ことです。
固体の振動エネルギーが気体である空気に伝播する。
発生した音、即ち空気の粗密波は、(2)の音が空気中を伝播することによって、ややマイルドになります。
マイルドになった音はマイクの振動板にぶつかってエネルギーを伝播し、マイクの振動板が振動する。



アンプで増幅してスピーカーの振動板を振動させても、再現されるのはマイクで拾った音です。
マイクで拾った音は空気中を伝播しマイルドになってしまった音。
ならばマイルドになってしまう前のVividな音を収録すればいい。

その方法は、なるべく楽器に近い位置にマイクを設置すること。
できれば楽器の発音部の振動を直接マイクで拾う。
これだけでは不自然な録音になってしまうので、初期反射や残響を別のマイクで拾いミックスする。

こうした録音方法を採らずとも手はあります。
それがホーンを使うということ。

固体の振動エネルギーを気体である空気に伝えるためには空気を効果的に"叩く"必要があります。
しかし圧力が高まればすぐに大気圧である他の場所へ逃げ出してしまう空気を効果的に"叩く"ためには空気を狭い場所に閉じ込めておくのが一番。
これなら大気圧である他の場所へ移動できない。
そしてこれを可能にするのがコンプレッションドライバー。
厳密に言えば、コンプレッションドライバーのダイアフラム表面と、このダイアフラム表面に向かい合っているフェーズプラグ表面との間の狭い空間で空気は効果的に"叩かれる"。

でもコンプレッションドライバーの秘密はこれだけじゃない。
フェーズプラグの複数のスリットを通してダイアフラム表面とフェーズプラグ表面との間で発生した全ての圧力がスロートに集合させられる。
ここで超高圧の音の塊が作られる。
コンプレッションドライバーは、マイクにより集音されたマイルドな音をベースにしつつ、楽器の発音状況を越えた猛烈な高エネルギー状態を作り出せるということです。



ここで空気のことを少し考えてみる。
扇風機(electric fan)の正面に立つと気流がこちらに向かって流れていることが分かる。
しかし、扇風機の背面に立つと気流は発生していない。
扇風機背面側の近くの空気をまんべんなく引き込んでいるにすぎない。
だから正圧と負圧の発生メカニズムは性質が異なる。

爆弾が爆発すると衝撃波が目視できます。
見えているのは正圧。
しかし負圧はこの正圧を際立たせている。
圧力差が大きいほど屈折率が異なるから。

"叩く"と表現すると正圧を連想するが、コンプレッションドライバーは負圧の発生においても優れている。
そして負圧をしっかり再現できると正圧が引き立つ。
アブソリュートの位相の話、だから本当は正相、逆相が分かりにくいスピーカーが優れている。

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